波止場                          佐相憲一

夜の港に来ています

しぶきが
腹の底に響きます

鳩ぽっぽ公園から
霧の中の汽笛まで

夢ばかりみてきました

もしかすると〈希望〉って
前を向いている時の
後ろ姿
なのかもしれません

昼間の喧騒も
闇の中でしずめられ
高層ビルや百円ショップや携帯メール

もまれて、もがいて、流されて、ぶつかって

そんな中でも
今日、どこかで権利を認められたひとがいて
今日、どこかで結ばれたひとたちがいて

海はつながっています

心の波打ち際から
今夜
各地のひとたちの
後ろ姿へ

この詩を贈ります

ラッシュアワーの駅で聞く人身事故を
ダイヤの乱れと苛立つ社会で
夢をばかにしないで生きるひとびとの
人生の波音を

わたしは大切にしたいのです