高田一葉詩集『ほら そこに』刊行しました!!

最新刊!!高田一葉詩集『ほら そこに』

たくさんの何かが続いている
雨音の中で
その一粒が
私に落ちた

始まりが生まれるって
こんなふうに
詩「ポチッ」より

跋文・高田一葉詩集『ほら そこに』に寄せて
夕焼けに匂いたつ記憶の水平線
佐相 憲一
晴天の日の新潟の海は実は明るい。瑠璃色の波の響きは風が強くても柔らかい。豪雪に耐え忍ぶイメージとは違って、それは真摯な愛の音楽を聴かせてくれる。晴れているのにしみじみと雨が降っているような、泣きはらした後の幼児の笑顔の印象だ。
それがまさに、この詩集の詩世界だろう。
生まれて死ぬまで人は日常の暮らしに追われているようで、歳月を経て振り返るとそこにさまざまな夢が波うっている。すでに他界した親しい人びとも生きていて、病や加齢をきっかけに自分の命も有限だと体感するからこそ、関係性の光が強い力で生の水面を照らすのだ。記憶の扉の向こう、世界の時空の浜辺には、懐かしい肉親、友人、知人が佇んでいる。深いところでは、戦前・戦後、時代に生きる人びとや、隣国の人びとの痛みまでもが自分自身のように感じられるだろう。そして、作者が愛してやまないこどもたちの姿で、生命力そのものが歓声をあげるだろう。
雨を聴いていると、命の眼で見つめてきたあれこれが情景となって匂いたつ。その感覚と思いを繊細な詩作品にとどめることでそれらは海に響き、今度は読者の心の夕焼けとつながる。
そうして、この味わい深い詩集の言葉はさりげなくじわじわと息づいていくに違いない。
ほら、そこに、切実な笑顔が波うっている。

著者略歴
高田一葉(たかだ かずよ)
1955年新潟生まれ、新潟在住
既刊詩集『風の地平線』『雪降る星で』『夢の午後』『青空の軌跡』『聞こえる』『手触り』
2000・2017年 国民文化祭現代詩部門文部科学大臣賞受賞
日本詩人クラブ会員、新潟県現代詩人会会員
個人詩誌「葉群」刊行中

定価 1500円+税